養育費の請求について
1 養育費とは
養育費とは,子を監護していない親が子を監護している親に対して支払う子が自立するまでに必要な費用をいいます。
具体的には,子の通常の衣食住の費用,教育費,治療費などがあります。
養育費については,夫婦で養育費を支払う約束になっていたのに,後に支払われなくなったというケースが多くあります。
そこで,ここでは,養育費の支払いを確保するための手段について検討します。
2 養育費の合意方法について
養育費の合意は,当事者の合意ですることも可能です。
実際には,離婚協議書を作成して,両者が署名・捺印をすることで合意の意思を明確にしておく手段が考えられます。
しかし,離婚協議書による合意は,簡便かつ安価というメリットはありますが,不払いの危険を考えた場合には不十分です。
後日不払いが生じたとしても,すぐには強制執行ができないからです。
そこで,養育費について合意ができた場合には,不払いの場合に強制執行をするため,強制執行認諾文言付公正証書を作成するのが有効です。
このようにしておけば,仮に約束が守られなかった場合に,公正証書を債務名義として強制執行手続をとることができます。
また,強制執行をされるかもしれないという心理的なプレッシャーを与え,結果として履行が確保される可能性もあります。
また,判決書や離婚調書によって養育費が決められた場合にも,すぐに強制執行手続をとることは可能です。
3 強制執行について
もし,養育費の約束が守られない場合には,強制的に相手側の財産を差し押さえ,支払わせることができます。
この手続きを,強制執行といいます。
⑴ 強制執行の対象
強制執行の対象となるのは,主に以下のものとなります。
- 預貯金
- 給料
- 土地や建物などの不動産
- 自動車などの動産
⑵ 強制執行に必要なもの
- 債務名義(確定判決,仮執行宣言付判決,和解調書,調停調書,強制執行認諾文言付公正証書等)
- 執行文(債務名義に強制執行できる効力があるということを証明する文書)
- 送達証明書(相手方が債務名義を受け取ったことを証明する文書)
⑶ 差押命令申立書の作成と申立て
差押命令申立書を作成し,必要書類を添付して裁判所に差押命令を申し立てます。
⑷ 差押え
裁判所から差押えの対象先(給与であれば相手方の勤務先)と相手方に対して差押命令が送達されます。
また,差し押さえ命令が送達されると,裁判所から「送達通知書」が交付されます。
⑸ 取立て
差押命令が送達された日から1週間が経過すると取立権が発生するので,取り立てを行います。
強制執行をお考えの方は,当事務所までご相談ください。